💬 きっかけ
本来は金曜夜に大弛小屋で前泊して、翌朝ババァと合流し金峰山に登る予定だった。
しかしババァが「ヨガ教室がある」と言い出し計画は白紙に。しかも聞けば、有名な先生に教わる特別レッスンらしく、完全に登山どころではなかった。
……まぁ、ババァが来ないなら金峰山である必要もない。
そんな調子ではこちらの山欲が満たされるはずもなく──
「んじゃ、羽伸ばしてくるか!」
そこで選んだのが、以前からずっと行きたかった立山。
本当の目的は、雄山神社でのご祈祷。
テン泊して縦走して参拝するというフルコース。一人だからこそできる、自由な行程。
静かに、そして厳かに、自分の足でたどり着くことに意味がある──そう思って、立山行きが決定した。
実は2022年に一過性の脳卒中をやらかしている。
「次倒れたら後遺症が残るかも」という恐怖がずっとつきまとっていて、しばらく外に出ることすら億劫になっていた。
でも少しずつ気持ちが回復して、春には嫌いだった塔ノ岳へ──しかも初登山でトラウマ化していた塔ノ岳〜鍋割山〜丹沢山まで。
さらに別日には、焼山から蛭ヶ岳〜大倉までのロングルートをソロで完歩。
⚠️ ご案内(読む前に)
- 本記録は登山技術の向上を目的としたものではありません
- 登山ルートよりも話の筋が滑落しています
- 長文につき、読了には根気と集中力が求められます
- 内容は一部フィクション風ですが、事実ベースです
- 読み終わる頃には、軽い疲労感と達成感が得られるかもしれません
📝 行動記録
0日目:夜行バス移動〜室堂ターミナル到着
出発は新宿都庁の大型バス乗り場。夜行登山バスが各方面に向けて発車しており、夜にもかかわらず登山者が大量に集結するという異様な光景。自分が乗る「毎日アルペン号」室堂直通便の列にもザックを背負った登山者が50人弱。耳をすませば「源次郎が〜」「平蔵のコルが〜」と、バリエーションルートを当然のように語る声が聞こえる。──本当に行く人、いるんだな。
周囲には軽装のハイカーやテント泊装備の人もちらほら。ただ、自分のようにテン泊→縦走→参拝というフルコースは見当たらない。バスはトイレなし。病後の体には水分制限がツラいが、数回の休憩に頼るしかない。寝不足回避のために高額な「ダブルシートプラン」にしたものの、「起きては寝て」を繰り返し、結果3時間ほどの仮眠で朝を迎える。
午前7時、予定通り室堂ターミナルに到着──が、事件発生。バスのトランクに預けたザックがビチャビチャ。ヒップベルト周辺がとくに濡れており、中身を全出し確認するも自分の水筒は無事。恐らく隣のザックからの水漏れが伝染した模様。臭いを嗅いでも硫黄臭が強くてわからず。粘つきがないため当初は「水」と判断するが……(※後述あり)。幸い、ダウンやシュラフはドライバッグに入れていたため無事。濡れていたら即下山→日帰りという地獄ルートになるところだった。
室堂〜雷鳥沢テン場(設営)
天気は快晴。にもかかわらず、こちらは「ビショ濡れザック」という地獄の門出。ヒップベルトの不快感は拭っても消えず、諦めて出発。道中は石畳の観光道で歩きやすいが、水漏れ確認で時間ロス+寝不足+フル装備の三重苦で、早くも足が激重。
雄山方面へ向かう登山者が大多数の中、自分は反時計回りにテン場直行コース。静かで孤独だが、むしろ好都合。雷鳥沢キャンプ場には朝イチに到着。風や傾斜を見てテント設営、完了は午前9時前。受付を済ませるも、ザック濡れと寝不足でメンタルがボロボロ。それでもテントに入った瞬間、全てがどうでもよくなる──…はずだったが、縦走スタートの時間が迫っていた。
雷鳥沢テン場〜剱御前小舎
調べた限り、「9時以降に出ると後々に響く」らしい。縦走ルートと午後の天気を考えると、早いに越したことはない。わかってはいた。わかってはいたのだが──スタートはギリで9時ちょうど。
当初は、少しでも楽という噂の新室堂乗越経由で登るつもりだった。ただ、遠目にそこそこの斜度の雪渓をトラバースしてる姿が見え、無理して通るほどの理由も無かったので、急遽雷鳥坂経由に変更。雷鳥沢の吊り橋を渡ったあたりから、さっそく登り。しっかりしたジグザグが続き、寝不足の身体にじわじわ堪える。日焼け対策に着てきた長袖の山シャツ。風がなく、太陽が照りつける中ではただの灼熱装備。暑くて、息も吸えないし吐けない。高山ってやつ、ほんと手強い。
まるで直火の中を歩いてるような状態で登り続け、小屋が近づく頃には指先がピリピリと痺れてくる。……これ、もしかして熱中症? 不安を抱えつつ、剱御前小舎に到着するや否や、売店で冷たい水とポカリを購入して一気飲み。なんとか復活。冷たい飲み物のありがたみが五臓六腑に染み渡る。落ち着いた頃に見下ろすと雷鳥沢キャンプ場が小さく。反対側には聳え立つ剣岳。山頂に人がいる様にも見える。
そしてこの時間、ここにいる人の大半は重装備でメット有り。剱岳方面へ行くのが容易わかる。別山方面へ行くのはごく数人。
■ 剱御前小舎〜別山
水とポカリでなんとか回復。小屋前のベンチで少し休憩したあと、次は別山へ向かう。
ここからは一気に稜線の雰囲気。眼下には剱沢、そしてその向こうには剱岳の圧倒的なシルエット。「ここまで来たなぁ…」と、ちょっと感傷に浸りたい気分になるが、足はまだだるいし、空気は薄いし、感動どころじゃないのが現実。何より時間に余裕がないが慌てる元気もない。
とはいえ、剱岳の全容が正面に広がる景色は圧巻の一言。テント場からここまでの疲れが報われる瞬間でもある。登山者の数は少ない。この時間に別山を目指す人も少ないのか、ほぼ単独行。静かな稜線を一歩一歩踏みしめる。なお、北方(別山北峰)には立ち寄らず。剱岳にもっとも近づける場所ではあるが、今回はパス。ここから先の縦走を考慮し、体力と時間温存を優先した。
■ 別山〜真砂岳
別山をあとにして、縦走路をそのまま進む。足元はガレ気味のザレ道で、油断するとズルっと滑る。
ここまで来て転ぶのもバカらしいので、一歩一歩慎重に。稜線上を歩く時間は、風があれば天国、無ければ灼熱。この日は基本的に無風。頭の上から容赦なく日差しが降り注ぎ、「これ、風があったら最高なんだけどな…」と何度思ったことか。
真砂岳に近づくにつれ、少しずつ登り返しが始まる。でも、別山までの疲れと高度順応が効いてきたのか、足取りはさっきよりも少し軽い。真砂岳の山頂は広く、看板も控えめ。「え、ここで合ってる?」と思うくらい地味。雄山方面から来るハイカーが数人見える。この先の稜線も静かで、落ち着いた山時間が続く。
■ 真砂岳〜大汝山〜雄山
真砂岳を過ぎ、しばらく進むと、目の前に「壁」みたいなものが現れる。そう、富士ノ折立。あのどっしりとした斜面。「これ登るのか?」と内心思ったが、今回はそこは巻いて通過。実際、ピーク手前までは登るものの、時間と体力を考えて横移動でスルー。そのまま登り返していくと、立山最高峰・大汝山の岩場に到達。ここでついに「文明」に出会う
売店。しかもポカリ売ってる。しかも冷えてる。しかも…冷やしてるの、氷じゃなくて雪渓の雪。バケツにブチ込んで、雪の中でキンキンに冷やされたやつ。「山ってこういうとこなんだよな…」と一口飲んでしみじみ。値段なんて関係ない。これは“神の飲み物”。軽く休憩を済ませ、岩をよじ登って山頂へ。標高的にはここが立山の“てっぺん”。でも空気は静か。そのまま今回の最終でもあり本来の目的地へ。
■ 雄山神社でご祈祷
社務所で初穂料を納め、そのまま案内に従って社殿へ。ザックを脇に置き、帽子を取り、岩の上で座って待つ。
やがて神職が登場。静かな空気に太鼓の音が響き渡る。
「どん、どん、どんどん」祈祷が始まる。
続けて耳に入ってきたのは神職の声
「〜かしこみかしこみ…」「目をつぶってください」「チャリーン」と鈴の音。
閉じたまぶたの裏に、ぱっと明かりが差し込んだ。
ガスが抜けて、空が晴れたのがわかる。目を開けるまでもなく、空が開けたと感じた。
なぜか目頭が熱くなった。
そのまま祝詞は静かに続き、空気はますます澄んでいく。ただその場にいるだけで、自分が“整えられていく”ようだった。
そして最後に、参加者全員が自分の来た方向を向いて立ち、神職の声に合わせて万歳三唱。
「ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい!」
祈祷の後は再び社務所へ。そこでいただいたのは、手書きの御朱印。
筆の走りも力強く、見ているだけで背筋が伸びる。朝の水漏れ事件もあったが、御朱印帳を汚さず持って来れて良かった。
■ 雄山〜一ノ越(遅めの昼メシ仕込み)
ご祈祷も終わって御朱印もゲット。静かな達成感を背負いながら、ザックを担ぎ直す。
ここまでの行程、まともな食事はゼロ。エナジージェルと行動食だけでひたすら動き続けてきた。「時間がもったいない」が理由だったけど、もうさすがに腹ペコ。
というわけで、アルファ米のおにぎりを水で戻す。出発前に仕込んでおけば、一ノ越に着く頃にはちょうどいい感じに仕上がる予定。小屋のポカリでひと息ついたし、あとはメシと下りを残すのみ。歩き出してすぐ、ふと後ろを振り返ると──剱岳方面はガスの中。「このまま天気、もってくれよ…」と少しだけ不安になる。稜線を吹き抜ける風に背中を押されながら、メシを待つ男の足取りで、一ノ越を目指していく。
■ 一ノ越〜室堂〜雷鳥沢
アルファ米おにぎりの出来上がりを待つつもりだったのに、なんだかんだで勢いがついてしまいおにぎりより先に自分が戻ってきた。
ならばそのまま一気に下山。一ノ越からは、室堂を経由するルートと、雷鳥沢直行のショートカットがあったけど…ショートカットの方は情報が少ないうえに雪渓ありそう。安全第一で観光ルートに切り替え、遠回りでも室堂を目指す。
実はこのルート選びにはもう一つ理由がある。雷鳥沢にも水はあるけど、基本煮沸が必要。一方の室堂の玉殿の湧水(通称:玉水)は、そのままがぶ飲みOKの名水。この差は大きい。
というわけで、疲れた身体に鞭打って、プラティパス2リットル満タンにして雷鳥沢へ。メシより先に、水の勝利。
■ 雷鳥沢(夕飯・晩酌)
本当は、雷鳥沢に戻ったらまず風呂に入る予定だった。雷鳥荘の風呂は立ち寄り湯OKだし、汗もかいたし、さっぱりしたかった。──が。雷鳥荘の前を通ったその時、ふと目に入ったタルの中の水に浸かった缶ビールの姿。
「…あれ、風呂より優先すべきじゃね?」
脳内で天使と悪魔が議論する間もなく、即購入。問題は、これを冷えてるうちにテントで飲みたいということ。選択肢はただひとつで風呂は後回し。急げ自分。
大きく膨らんだ2リットルのプラティパスと、冷えたビールを携えて、テン場まで全力帰還。テン場に戻ると、まずは何よりも──ビール、即開封。もう、背負って戻る道中から「プシュッ」の音を脳内再生してたレベル。
肴は、さっき間に合わなかったアルファ米おにぎり。すっかり仕上がってて、むしろベストな戻し具合。おにぎり食べながらつまみ用のソーセージをボイルして用意。体に少しずつ力が戻っていくのを感じる。そしてビールの後は持参した氷と芋焼酎。山で飲む芋ロックが最高に旨い。チビチビやりながらサブザックの片付けなどしていると、腹減り虫が。もうそのまま晩飯の準備。生米炊いて無印のルーロー飯のレトルト温めて。風呂は後回しにしたまま、そのまま夕暮れの空を眺めながらまったり。雷鳥沢のテン場って、ちょっとした町みたいな賑わいがあるけど、この時間になるとだんだん静かになってくる。
雷鳥沢は電波が通じる。検索したが風呂の営業時間が変わった?とか?よく分からず。帰ってくる時に遠い雷鳥荘から風呂上がりの格好で歩いてる2人いたっけか。と既に行く元気無し。汗拭きシートで拭きまくって済ませました。そしてそのまま疲れて寝落ち。寝不足もあったせいかとてもよく寝た気がする。
■ 2日目・朝(撤収準備)
早朝、周囲の登山者たちの物音で自然に目が覚める。外はまだ薄暗く、テン場全体が静けさに包まれている。あちこちでヘッドライトの光がぽつぽつと動き、それぞれがそれぞれの山へ向かって歩き出している。──静かで落ち着いた、山の朝。目覚ましもかけずに、寝落ちしていたらしい。うたた寝を繰り返しながら、4時ごろから朝食準備に入る。この日の朝飯は、サタケのマジックパスタとインスタントスープ。
そんな中、隣のテントの登山者がやらかした。自分と同じサタケのマジックパスタを、豪快に外へぶちまけたのだ。そして何事もなかったように、ぶちまけたそれをベンチの下の土に埋めた。正直、注意するか迷った。でもその人がトイレに行った隙に、土ごと拾って処理しておいた。テントの中にはもう一人、相方らしき人物がいたが──何も言わず、見て見ぬふり。朝からなんとも言えないモヤモヤした気持ちに包まれる。朝食を終えると、気を取り直して撤収準備に入る。
■ 雷鳥沢キャンプ場〜雷鳥荘
撤収を終えてテン場をあとにしようとした頃──昨日よりテントが明らかに増えている。どうやら高校の山岳部が2校ほど来ていたようで、団体用の大きなテントや賑やかな声がテン場に新たな雰囲気を与えていた。ウェアはバラバラだが、どこか初々しくて新鮮な空気。これから始まる山行へのワクワクが、張り詰めた緊張とともに漂っている。
こちらはすっかり下山モード。ザックを背負いながら、その空気を横目に出発する。雷鳥荘までは短いが、最後の登り返しがじんわり効く。「なんで最後に登らせるんだよ…」という思いを押し殺しながら、黙々と歩を進める。
■ 雷鳥荘〜室堂
雷鳥荘をそのままスルーし、昨日も歩いた観光路を室堂へ。こちらには稜線の記憶と疲労の名残。ちょっとだけ、優越感。室堂に到着すると、周囲は完全に観光地。お土産屋、ソフトクリーム。
■ 扇沢〜長野駅〜(新幹線)〜新宿
扇沢からは松本経由で「あずさ」という王道ルートもあるが、今回は長野までバスで出て、新幹線で帰る方が断然早いと判断。…が、ここで痛恨の足止め。バスの臨時便は扇沢〜室堂間と違って出ておらず、ここで約1時間の待ちぼうけ。
それでも、時間が遅くなるにつれて下山してくる人もどんどん増えていたため、早めの行動が正解だったと感じた瞬間でもあった。
🏕️ 施設・補給ポイント
- 室堂ターミナル:トイレ、水場、売店あり
- 雷鳥沢キャンプ場:トイレ、水場(煮沸推奨)、受付あり
- 剱御前小舎:トイレ、売店(ポカリ等)あり
- 大汝休憩所:トイレ、売店(雪冷ポカリ)
- 雄山神社社務所:ご祈祷、御朱印、売店あり
- 一ノ越山荘:トイレ、売店あり
♨️ 下山後の風呂事情
- 雷鳥荘(立ち寄り湯):未訪(缶ビールを優先)
- ボディシートで応急処置。風呂スキップで新幹線直帰
⚠️ 注意ポイントまとめ
- 玉殿の湧水はそのまま飲用OK
- 雷鳥沢の水は煮沸推奨
- 観光ルート経由が安全(雪渓回避)
- 雷鳥沢→室堂のショートカットは雪渓あり注意
🌤 状況メモ
- 天気:快晴 → 曇り(稜線ガス)
- 気温:朝10℃前後/日中25℃超え(体感)
- 登山道状況:全体的に良好(ザレ場・雪渓は回避)
🎁 名産品・下山メシ・風呂
- 室堂限定の地酒:未購入(ネット購入可と知って見送り)
- 扇沢駅レストラン 山賊焼ラーメン:別皿で出してほしい(1,300円)
- 明治亭ソースカツ丼(長野駅ホーム):冷めても美味い信州の正義
📏 登山データ
- 距離:13.6km
- 累積標高差:上り 1,319m/下り 1,317m
- 歩行時間:1日目 9時間55分+2日目 1時間05分
- 山行日数:2日(テント泊)
- 標準コースタイム比較:+30分(荷物・水漏れ・祈祷など含む)
🛠️ メモ(装備・費用など)
👔 装備構成
- ベース:アクシーズクイン・ベンチレーションタンクトップ
- ミドル:山と道・アクティブプルオーバー
- シェル:パタゴニア・フーディニジャケット
- パンツ:パタゴニア・バーブライトパンツ
- ブーツ:スポルティバ・エクリビウムトレック
- テント:アライテント SLドーム
- シュラフ:ナンガ UDD BAG 380DX+イスカシルクライナー
- マット:山と道 ULパッド1.5
- 枕:エアピロー
🍙 食料構成
- 行動食:アミノバイタル、ようかん、ジェル
- 昼メシ:アルファ米のおにぎり(水戻し)
- 夕メシ:ルーローハン、ソーセージ、焼酎ロック
- 朝メシ:マジックパスタ+スープ
💰 費用まとめ(概算)
- 夜行バス(新宿→室堂):19,000円
- ダブルシート追加:11,000円
- アルペンルート+バス+新幹線(復路):23,150円
- ご祈祷+御朱印:1,200円
- テン場幕営料:1,000円
- 山食・飲料・土産など:合計 約3,000円
- 合計:58,350円前後
📦 パック重量
- ベースウェイト:12kg(食料・水・燃料除く)
- パックウェイト(初期総重量):14〜15kg


